部分から全体へ

旅館・ホテルのデザイン部分から全体へ

私達は、旅館、ホテルのデザインの場合はインスタレーション的に全体からデザインを進めるのではなく、
手で触れる身近な部分からデザインをしていき、波紋が広がるように全体へとデザインを進めていくようにしています。
というのも旅館やホテルの場合はやはり何と言っても他の業態に比べて、滞在時間が圧倒的に長いことがその要因です。
全体の雰囲気は一瞬ですが、その後、落ち着いたら急須や置物に目が移り、より細部に至るまで、お客さまの目が行き届くことは間違いないからです。ここで誤解していただきたくないのですが、なにもレストランや物販店だから細部にこだわらないということではなく、ここで言いたいのは、あくまでも手法の問題です。レストランや物販店は、滞在時間が少ない為どちらかというと全体の雰囲気でそこに流れている空気感を「のむ」ことが重要な戦略のひとつになります。
よって入ったときのインパクトや居心地を重視するので、全体のイメージからデザインを進めていき、より部分、細部へとデザインを進めるようにしているのです。旅館、ホテルのデザインは、何気に置いてある茶碗や茶托、急須や布巾に至るまで「かわいい」がなければなりません。

それら部分の集合が部屋(全体)を構成していくのです。
ですからまずはコンセプトに添った茶碗、茶托を選び、または作り、それらに合うテーブルは?その天板の色は?
というように広げていきます。そんなことを繰り返し作業しているとあることに気付かされます。
それは空間とは様々な物の集合で形成されているというごく当たり前のことなのですが、これが新鮮なことなのです。
一つ一つの物たちが集まっていくことで全体を形成し、空間という箱を形成しているこは、改めて考えてみると、実はあまり意識していないことではないでしょうか?空の間、空間に何を忍ばせるかで、その間が構成されることを再認識させられます。旅館、ホテルはプロダクトの集合といっても過言ではないかと思うのです。

コンセプトに添った一つ一つのプロダクトによって空間を構築していく楽しさ、「かわいい」がいっぱい集まることで隙のない空間が構築され、そこを訪れた人々に小さな感動をたくさんつくることができるのだと思うのです。