ファサード考

ファサード考

ファサードとは外観、それも正面を切り取った面をフォサードと私達は認識している。
ファサードはまさに店舗の顔である。その顔をどう表現していくか?それはそのお店の業態(なに屋さんか)は勿論、理念、空間コンセプト、店の格(店格)、社風ならぬ「店風」をも表現しなければならないと思っている。

また、ファサードは最大の広告物でもあると考えている。そのお店を表現する上で、パッと見た瞬間に、なに屋でどのような雰囲気か、またどれくらいの価格帯なのか、どんな店格でどんな店風なのかが、一目でわかるようにすることが基本となるだろう。しかし、どんな場合でも例外はあり、ファサードも同様に、良い意味での裏切りをあえてつくり、お客様の良質なギャップを狙いにいく場合もある。
例えば、以前デザインさせていただいた超高級鮨店では、どこが入口かが全くわからない仕掛けになっていて、勿論、看板すら設置しないことを良しとした例もある。これは限られたVIPのお客様のみが通うお店である。
弊社のHPは勿論、ネット、マスコミは一切お断りの未発表店舗である。所在地も秘密保持という徹底ぶりである。こんな例外もあるにはあるが、多くの店舗はそうではなく、やはり一人でも多くのお客様にご来店いただきたいというのが常である。そのためにもクライアントの実施しようとする内容を完全に把握する必要性がある。デザイナーの独りよがりのデザインによって、集客チャンスを知らず知らずに逃すようなことだけは避けたいものである。
また、現在、飽和状態にあるショップの中から、お客様に選んでいただくには、今の時代は特に「わかりやすさ」が、商売繁盛の基点になることが多い。しかし、わかりやすいだけでは、残念ながら集客に繋がるとも言いにくい側面があることも事実である。今は時代的に「わかりやすい=流行る」を実践しているお店が、逆に溢れかえっているからである。

そこで必要になるのが「キラーコンテンツのデフォルメ」という手法が効果的であると私たちは考えている。
その店の特徴となるものを探し出し、それらをキラーコンテンツとして際立たせるこの手法は、お客様に他にはないインパクトを与え、他店と同化させないという狙いがある。さらに、先に述べたそのお店の「格」や「風」をしっかりと忍ばせなければならないと考えている。それでいて、インパクト、それもディープインパクトを与えるファサードが有効的であると考えている。しかも、そこに立地性を加味したファサードでなければならない。
歩行速度が早い場所、例えば、駅中や駅前などの立地であれば、人々の歩行速度を鈍化させるインパクトをつくると有効的であるし、ひっそりと佇む立地であれば、周辺環境を崩さない上品なファサードでありながらも、その上品さが他よりも際立つ手法なども有効的である。勿論これらは、業態と立地の整合性がとれている場合に有効的な例ではあるが、いずれにしても、「ここに我あり」と、その存在感を際立たせるということが大前提となる、その役割がファサードにはある。
内部から滲み出てくるお店の在り方を表現していくものがファサードであり、あくまでもその地域で、良い意味で際立つものでなければならないと考えている。どんな人かは体が表すではないが、お店も同様に在り方が表面化する、その表面化をより際立たせたものがファサードなのかも知れない。