ファサード(外観)サイン

ファサード(外観)サイン

おかげさまで毎年、国際的な賞をいくつか受賞する機会が増えました。その中で今年は、日本サインデザイン賞という権威ある賞の銀賞と審査員特別賞をいただきました。それは大阪の難波という誰もが知る繁華街のど真ん中でデザインしたビーガンスイーツのお店のファサードが受賞したものです。それはビーガンというある種の自然の営みと深く関わりのある食を、空間そのもので表現しようと考えたものでした。ビーガンに持っている人々のイメージを裏切らない為に僕が選択した素材が「土」の温もりでした。人々にシンプルかつ、わかりやすく商品や取り組みを伝えていく術としても、このファサードをはじめとした空間デザインを選択して良かったと考えています。
ところで本題は何かというと、ファサードサインのデザインについてです。僕にとって商環境におけるファサードサインとは「内から滲み出ていくもの」でなければならないと考えています。僕は、そのお店が何屋かは勿論のこと、そのお店の理念や思想がファサードに滲み出ていくことを理想としています。勿論、外観やサインではあえて何屋さんかわからないようにして他の情報発信の手法で知らしめるというやり方はあるにしても、基本はやはり「そのお店自体の理念や思想、想いが滲み出ていくもの」が理想だと思うのです。それらを背景にその土地やビルの持っているポテンシャル(立地や顔、その土地の土着性)などを意識したデザインでなければならないと考えています。
つい最近提案したプロジェクトでも繁華街のど真ん中にあって周りが派手派手ギラギラな看板に囲まれている中であえて派手ギラで勝負するか、または、あえてシンプルにするかの議論になった際に僕が出した答えは「異質」でした。その場にあってそのお店がやろうとされている内容が周りと異なるなら、表層的な思考だけで派手とかシンプル、ミニマルにこだわった空間創造ではなく、その本質を見極めた上で、その場にあって、際立ち、さらに溶け込むような「良質な異質」をつくってはどうかとご提案しました。勿論、商売をする場所だから、他より目立たないといけないのは当然ですが、どう目立たせるかというより「際立たせる」という言葉が僕にとっては正解かもしれません。この度のビーガンスイーツ店も同様に周りより目立っているというより、ひときわ際立っているという言葉が正解に思えます。その辺りが評価されたのだと、うれしく思います。これからも商売をする場、商環境にこだわってデザインする我々としては作品づくりではなく、とことん、商売の場、商環境にこだわった商品的空間をデザインしていこうと思うのです。

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