社内プロデューサー

社内プロデューサー

私達が企業から依頼を受けデザインしていく上で、もっとも理想的な取り組みとしては、社内にプロデューサー的役割を担う人が存在する場合である。その多くはトップまたは、トップに準ずる方の場合が多いが、そうでない場合、大企業と言われる会社に多いが、空間デザインは空間デザイン、広告デザインは広告デザインというように縦で部署割りされていて、その間を行き来するコミュニケーションに問題が生じる場合があるのである。
ヒット店やヒット商品をつくりあげるのは、多くの必然がタイミングよく重なりあうことで生まれる偶然が、ヒットを導き出すことが多い。その偶然を偶然として捉えるのではなく、必然にすべくトータルにバランスを取りながら調整していくのがプロデューサーの役割であると私達は考えている。
勿論この役割が外部の私達に求められることも少なくない。この為、インテリアデザイナーの私達が、ポスターのディレクションからオペレーション計画、マネジメント計画、全体のプロモーション計画まで細部に渡ってプロデュースを依頼されるのである。これは企業内の縦割りで起るアンバランスによる失敗リスクを軽減できるといったメリットがあり、トータルにブランディングが可能となるのである。
皆さんもよく目にすると思うが、空間は洗練されているのにフライヤー(チラシ)がなんでコレ?とか、オペレーションがなんでコレ?とか、極端に対価が合っていないとか、なんで今これなのとか、時間軸のズレなど様々なズレを引き起こし最終目的まで到達しない例の多くが、縦割りから起った歪みである。

声を大にしていうが、本来ヒットを産み出す為にはトータルに絶妙なバランスを保ちつつサイマル(同時)的に横と密にコミュニケーションを取りつつ、イメージしたブランドの姿を構築していかなければならない。
その際に私達、外部の人間は大いにに役立つと思っている。社内にいる人は当然どっぷり社内に浸かっているのだから、それなりのしがらみがあるのだが、外部の私達にはそんなものは存在しない。あくまでもそのプロジェクトの成功ビジョンに対し妥協なく言い放つことができるのである。新しい取り組みをする時は誰でも恐いし、猜疑心が発生して当然である。だが、任せたのであれば最後まで信じきる勇気こそ、しいて言えば外部を使うリスクなのかもしれない。

しかしながら、外部の私達をご採用いただいた企業様がずっと外部だけのプロデューサーやデザイナーだけでいいとは私達は決して思ってはいない。本来、社内のそういった縦の壁を乗り越え、社内の声をまとめ上げ、時流を感じ取り、外部のプロデューサーやデザイナーと意識の共有がはかれる人材育成が、必要であると思っている。しかし残念ながら、日本では社内プロデューサーの必要性認識が薄いように思う。社内プロデューサーという認識がまだ日本では希薄な為である。
その為に、せっかくその立場にある人の自覚がまだ育っておらず、企業側も外部からもっと貪欲にそのノウハウの吸収を試みようとしないからである。だが、今後社内におけるプロデューサーは絶対的に必要とされるだろう。社内の意見をまとめ、外部のプロデューサーまたはデザイナーとの意見を調整し、プロジェクトを成功に導く人材こそ、これからの企業には必要なのである。ここで付け加えておくが、社内の意見をまとめ上げると簡単に言っているが、これは最重要なポイントの一つでもある。各セクションの意見を聞いて回ることが意見をまとめることではない。
ある時は、必要にかられ、ぶつかり説得したり貴重な意見を活かす手法を考え出したり、コミュニケーションのプロでなくてはならないと同時に、社内プロデューサーは決してデザインやマーケティングの専門知識が必要ではないと思っている。これらは外部のデザイナーに任せればいい。では、社内プロデューサーに必要な要素は何かと言えば、まず時流感覚のバランスが良くなくてはならない。商売は時間軸の上に成り立っているのであるから、常に流動化する消費意識や流行、なにがイケてて、なにがイケてないのかを判断できる力が必要なのである。次にビジョンを持っているかである。
こうなるんだという明確なビジョンで人々を引っぱっていけるだけのビジョンを持ち得ることができるかである。
さらに経営にも精通していなければならない。プロジェクトは多くのリスクがはらむ。その際にどんぶりでは困る。
最後に人に任せきることができるかである。組んだデザイナーやプロデューサーは当然それなりの実績を持っているのだから(実績主義は嫌いであるが)その人に任せ、細部に渡って指示を出し過ぎないことも重要である。細かな指示はそのデザイナーの個性や思考を殺してしまう恐れがあるからである。大きな指示だけし、後は任せる勇気が必要なのである。
但し、意見を言ってはいけないということではない。デザインの根底を崩すぐらいの細かすぎる指摘がまずいということである。これらの諸条件を兼ね備えた社内プロデューサーが育成できればプロジェクトの失敗リスクは、かなり軽減できるはずであると同時にヒットを飛ばせる可能性が数段と高くなるはずである。

一人の力がそんなにと思われるかもしれないが、オーナーまたはオーナーに準ずる人は最初全て自分でこうやって決断してこられた筈である。それを社内の誰かに託す。託された人が社内プロデューサーである。
何度も言うがオーナーまたはオーナーに準ずる人が携わらない組織形態をお持ちの企業には、社内プロデューサー育成をお勧めしたいものである。縦割りでない、トータルバランスの取れた、必然性を故意に作り上げることができるプロジェクトにこそ、成功があるのだと信じてやまない。

In-House Producer

When a company requested us to do the design, it will be ideal if there is a producer in the company. In most of the case, a producer is a representative person of the company, however, a big company tends to be organized in a vertical structure where each design work is divided into a separated division. The vertical structure in a company sometime causes miscommunications or lack of communications between the divisions. To make a project successful, a producer needs to overlook the project as a whole and maintain the balance. It is not rare for us to be requested to work on the production, so we get to produce graphics, operation planning, management, promoting strategy and etc. By having a producer for a project, there is a merit of reducing the risk to fail due to the vertical structure in a company. You have probably have experienced at least once in the very sophisticated restaurant or shop, the menu or flyer is poorly designed or the operation and services are poor; these are the gap caused by working in the vertically. To create a hit, maintaining the balance of the project by communicating horizontally and share the same image of the project till the end. For the people working for the company, it is a bit difficult to maintain the balance due to the company’s restrictions, on the other hand, for designers from outside do not have a limit by those restrictions, so we can purely pursue the vision. By bringing a producer from the outside, you can reduce some risks but you must have the courage to fully trust the person until the end.
We do not believe that is good for those companies who requested us to do the production to keep relying on a producer from the outside. Even though the needs for those in-house producers are not high in Japan, I believe the needs will increase in near future. What are the important skills to be a producer who combines all the ideas and connects designers both inside and outside of the company? First of all, a producer has to be excellent in communication but not necessary in design and marketing. Sensing the time and the trend is a must. A producer needs to be able to tell what can be a hit and what can’t from always changing consumers needs and trends. In addition to that, a producer has to have a vision, and the vision has to be clear and has power to lead the team. Knowledge of management is also necessary. At last, a producer has to be able to trust the team and the experiences and skills of the designers. Giving too detailed directions might take away the uniqueness and potential of the designers in the team. What a producer should do is to give a big idea of the project and have the courage to leave it to the team. If you successfully trained an in-house producer who has the all those things I mentioned above, the risks will be reduced and the possibility of creating a hit will be higher. You might think I am exaggerating the power of a producer, but I think all the owners of a business did all of this by himself / herself when first started their businesses. Then, the owner trains someone in the company to do the same. The person is the in-house producer, the key to a success of a project.